高校入試分析

2018石川県公立高校入試問題の分析(理科)

投稿日:2018年3月9日 更新日:

第1問 小問集合

ガスバーナーの問題では暗記殺しの精神が如何なく発揮されている。我々としては嬉々とするところだが、生徒らにはたまったものではない。ガスバーナーで遊んで怒られるくらいが理科では丁度良いということかもしれない。「哺乳類が鳥類より先」ということについては、数年後形を変えて再出題されるだろうのでそれに備えたい。

  • 問4(2)でのレンズと光の問題は、類題をやったことが無いと解けないだろう。

第2問 遺伝(生物)

第2問と第3問は、文系理科の問題である。問題集に無い問題を出題したいという欲望と、計算問題を避けたことが、そのような印象の作問に結実したのだろうか。

  • 問1~問3は平均点調整用の点取り問題。
  • 問4は注意深く問題を読む必要がある。人によっては、図2に示されるような染色体のモデル図を3~4点描き、その図を見ながら問題文を何度も読まないと理解できない。作問側が、計算能力より「論理的な文章読解能力」を追求している印象だ。
  • また、知っていれば書ける問5のような記述問題が理科出題全体に増えた。記述力というより暗記力が試されている記述問題になっている。本当に問いたい記述力を作問に発揮すると、難易度が高い問題になりがち。難易度が高い記述は、記述と言うだけで全て単に捨てられてしまい、出題の意味が薄れる、そのように考えて避けているのであろうか。採点しにくい問題を出したくないという本音もあるように思われる。

第3問 物質(化学)

  • 問2にて、本年唯一の非常に簡単な計算問題が出題された。作問がこれほど計算を軽視するのはなぜだろう。理科全体としては均整のとれた出題なのでなお疑問である。理由が見つからない以上、作問の「好み」で計算問題が減ったのかと勘繰りたくなる。
  • 問4は悪問。公務員試験か。嘘つき村と正直村に代表されるような論理の問題。理科実験の中で問われる基礎能力であることは確かだが、題材が密度である必要が無い。逆に言えば、密度について全く理解の無い人間でも、丁寧に論理を追えば解けてしまう問題である。これも問題集に無い問題を模索した結果行きついた作問だとすれば、来年度以降軌道修正されるはず。理科に持ち込まず、数学か国語でやればいい。それにしても、昨今の学生における論理性の欠如が、教育現場にて切に感じられていることが伺える出題だ。西高あたりの学生の学力低下が急速かつ顕著で、作問がこれを出題したくなった理由はよく理解できる。
    追記
    知人の研究職の方より助言があり、その内容に基づいて分析結果を改めたい。上記分析では、問4は「密度の事を理解していなくても論理で解ける悪問」と断じた。一方、いただいた助言は次の通り。

    そもそも新たな事象について調べているときは、まだ対象の仕組みや作用機序がよく分かっていない。得られた実験結果や観察結果に基づいて、論理によって科学的な結論にたどり着くことも試みる。よって、密度について良くわかっていなくても、論理で正解を導き出せるならばそれでよいのではないか。

    この指摘に基づけば、本問を悪問と断じる事はできない。前述内容を訂正する。

第4問 電流と磁界(物理)

例年通りの難易度、例年通りの内容。きちんと勉強した者とセンスがある者のみが解けるという問題。

第5問 天体(地学)

  • 問2は、内惑星と外惑星の区別、地球型惑星と木星型惑星の区別ができればイとウで悩む二択に落とせる。この二択は重箱の隅をつつくような問題に見えるが、それは拙子の知識が不完全であるためだろうか。
  • 問3は傑作。この問題は今後何度も解かれ復習されるべき良問。市井には難しく感じられているようだが、天体の運行を動的に理解していれば、理科が苦手な者にも解ける。この問題に暗記は通用しない、かつ、考えれば解ける。さらに、文字情報のみの単純な論理問題にまでは落ちてはいない。

第6問 原子(化学)

資料から元素の発見の歴史を追わせている。良くある問題に良くある解答だが、資料(のようなもの)に関連させようとして出題されている様子。

  • 問3は先に述べた「生活の中での理科への関心」が問われている。理科に興味の無い者の点数がきちんと下がるように作られている。

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