何年も前、タイでタオル工場を見学したときのことです。
駐車場の黒いアスファルトが太陽で焼かれて白く見えた覚えがあります。
空気も身体も暑かった。
中の工場の、何を見たか、もう覚えていません。
思い出すのは、出来たての白いタオルを重ね、糸で仮止めして袋に入れる女の人です。
機械の音は少し遠くで聞こえていたでしょうか。
これだけたくさんのタオルが、毎日世の中に出ていっているのですよね。
世界がタオルでいっぱいにならないのはなんでだ?
と、一緒に来ていた誰かと話したのでしょう。
このタオルの中には、殺された人の血を吸わされるタオルもあるのか
と、言ったかもしれません。何を言ってるんでしょうね。
もう、その前もあとも、どこへ行って何を見たかも、覚えていません。
思い出そうとしても、ただ晴れた空と熱気と車に乗ったことだけが出てきます。
彼の声さえも、彼だったのかさえも、覚えていないのですけれど。
産まれたばっかりの赤ちゃんを包むタオルもあるんじゃない?
そんな返事だったでしょうか。
世界がタオルでいっぱいにならない理由がわかった気がしました。
昨日、掃除に使って汚れたタオルを、好奇心から2度洗いました。
汚れはたぶん薄くなったのかな、でも残ったままでした。
掃除に使うタオルの棚に乱暴に戻したときに思いついたこと、すべてはfictionです。
あなたは世界をどのように見ていますか
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